看護師同乗・救急救命士同乗の違い
患者等搬送事業者(いわゆる民間救急)において、
看護師同乗と救急救命士同乗は、役割も法的立ち位置も明確に異なります。
重要なのは、
「どちらが優れているか」ではなく、
その搬送で何が求められるのかという視点です。
看護師同乗の本質的な役割
看護師同乗の最大の意義は、
搬送中も医療行為・医療的ケアを継続できることにあります。
看護師は、医師の指示や包括的指示のもと、
- バイタルサインの継続的観察
- 酸素療法の管理
- 吸引(口腔・咽頭・気管内)
- 体位調整・体位変換
- 人工呼吸器や医療機器の観察・トラブル対応
など、日常的に行われている医療・看護を途切れさせずに搬送する役割を担います。
そのため、
在宅酸素療法、頻回吸引、人工呼吸器管理などを必要とする搬送では、
看護師同乗が安全性に直結するケースが多いと言えます。
救急救命士同乗の本質的な役割
一方、救急救命士は、
患者等搬送事業者において原則として医療行為を実施することはできません。
これは法制度上の位置づけによるものであり、
能力や専門性が低いという意味ではありません。
救急救命士の専門性は、
搬送中に状態が急変した場合の評価と応急処置、そして119番通報との的確な連携にあります。
具体的には、
- 状態変化の早期察知
- ABC評価などによる迅速な全身評価
- 気道確保、バッグバルブマスク換気、AED使用などの応急処置
- 救急隊への正確な情報伝達と引き継ぎ
といった、急変時の初期対応に強みを発揮します。
決定的な違いは「医療行為の継続が必要かどうか」
両者の違いを整理すると、
判断の軸は次の一点に集約されます。
- 搬送中に医療行為・医療的ケアを継続する必要があるか
- → 必要な場合は 看護師同乗
- 状態は比較的安定しているが、急変時の初期対応体制を重視したいか
- → 重視する場合は 救急救命士同乗
つまり、
看護師同乗は「ケアを止めないための体制」
救急救命士同乗は「急変に備えるための体制」
と整理することができます。
最後に
患者等搬送事業者を利用する際には、
「看護師がいるか」「救急救命士がいるか」という表面的な違いではなく、
・搬送中に何が必要か
・どこまでの対応を想定しているか
を基準に、体制を確認・選択することが重要です。
それが結果として、
安全で安心な搬送につながります。