こんなときどうする?救護の現場から見たリアルな対応事例
「もしこの場に救護スタッフがいなかったら…」
イベント運営において、救護体制は“備え”というよりも“必須のインフラ”になりつつあります。
今回は、現場で実際に起こった出来事をモデルに、救護スタッフがどのように判断し、対応しているのかを、匿名・設定を曖昧にしながら3つのケースとしてご紹介します。

事例1|転倒による骨折疑い、冷静な初期対応の力
ある地域の屋外イベントにて、来場者が転倒。足首を強く捻った様子で、痛みを訴えて動かせない状態でした。
対応の流れ:
• スタッフが通報 → 救護スタッフが現場へ急行
• 患部の腫れと変形を確認 → 骨折の可能性を想定し、無理に動かさず
• 冷却材で患部を冷やし、添え木代わりの道具で簡易固定
• 付き添いの家族と状況を共有し、医療機関を案内
• 後日、医療機関で骨折と診断されたとの報告あり
教訓:
• その場で処置できる限界を見極め、無理に動かさない判断が重要
• 骨折についてはRICEで対応。
RICEとは?
• R:Rest(安静)
患部を動かさず、できるだけ安静を保つ
• I:Ice(冷却)
氷や冷却材で患部を冷やし、腫れや内出血を抑える
• C:Compression(圧迫)
軽く圧迫して腫れを防止(骨折の場合は強く圧迫しすぎないよう注意)
• E:Elevation(挙上)
患部を心臓より高く保ち、腫れを抑える
これらの対応を適切に行うことで、二次的な悪化を防ぐ。
事例2|熱中症の兆候、冷却と休息で回復したケース
真夏の炎天下、スポーツ系のイベントで、来場者が歩行中に足取りがふらつき、その場で座り込んでしまうケースがありました。
対応の流れ:
• スタッフが気づき、救護スタッフへ通報
• 水分補給が不十分で、顔色が悪く、顔面紅潮、体熱感あり
• 救護室に移動し、うちわで扇ぐ+冷却タオルを首・脇に
• 水分と塩分の補給 → 2時間後の安静で症状軽減。
教訓:
• 熱中症の初期対応はスピードが命
• 迅速な冷却処置と水分補給で、救急搬送を回避できた好例
事例3|意識障害による救急要請、スムーズな搬送連携
屋内イベントの最中、参加者の一人が突然座り込み、意識がもうろうとする状態に。問いかけにも反応が鈍く、表情に違和感が見られました。
対応の流れ:
• スタッフが状況を見て救護へ連絡、即座に救急車を要請
• 救急隊到着までの間、気道確保とバイタル確認を行い、付き添いを継続
• 救急隊へ状況と既往歴(聞き取りできた範囲)を報告
• 安全に搬送完了 → 後日、命に別状はなかったとの連絡あり
教訓:
• 判断を迷わず、すぐに専門機関へつなぐ判断力が重要
• 安心感を与える声かけと、的確な情報の引き継ぎも大切な役割
現場で求められる3つの力
① 状況判断力
- 「すぐ処置するか」「搬送を優先するか」の見極め
② 連携力
- スタッフ間、本部、医療機関とのスムーズな情報共有
③ 精神的サポート力
- 傷病者や家族に対する安心感のある声かけ・説明も大切
まとめ:現場の一瞬にこそ、救護の価値が現れる
救護スタッフは、ただ処置を行うだけでなく、現場の安心感を支える存在でもあります。今回のような事例は、どんなイベントでも起こり得ることです。
「何も起きない」ことが理想ですが、「何か起きたとき」に迷いなく対応できる準備が、真の安全対策と言えるでしょう。
次回は、「救護業務を外注する際に運営が見るべき比較ポイント」についてご紹介します。