救護体制がなければどうなる?リスク事例から学ぶ備えの重要性
イベントを安全かつ円滑に進行させるためには、音響や運営進行、来場者対応といった多くの要素がありますが、意外と軽視されがちなのが**「救護体制」**です。
「そんなに大きなイベントじゃないから」「万が一なんて、そう起きるものではない」
——本当にそうでしょうか? 今回は、実際に起こった事例をもとに、**救護体制の必要性と“なかったときのリスク”**について深く掘り下げていきます。

想定外の出来事は、想定しておくべき
夏のある日、地域で開催された中規模のスポーツフェスティバル。天候は晴れ、気温は35度を超える猛暑日でした。
午後、1人の参加者が急に倒れ込みました。現場にいたスタッフはすぐに駆け寄りましたが、明らかに熱中症の重症例。自力で歩けず、意識ももうろうとした状態でした。
しかしこのイベントには、救護ブースや専門スタッフはおらず、「誰が判断するのか」「どう運ぶのか」「病院に連絡するのか」など、対応の全てがその場の即席判断に任されてしまったのです。
【事例1】動けない熱中症患者に、誰が搬送判断を下すのか?
倒れた方を日陰に運び、水をかけて冷やす応急処置までは行われましたが、「このまま回復を待ってよいのか」「救急車を呼ぶべきか」の判断に迷いが生じました。
周囲では
• 「あと少しで意識が戻るかも」
• 「でも呼吸が浅くなってないか?」
• 「病院までの搬送手段がない…」
といった声が交錯し、最終的には遅れて呼んだ救急隊員から「この状態ならもっと早く連絡すべきだった」と注意される事態に。早期搬送判断の機会を失ったことは、イベント全体の信頼にも影響を与えました。
【事例2】出血事故発生時、誰も止血の方法を知らなかった
また、別の地域フェスティバルでは、調理ブースでボランティアが誤って刃物で手を深く切るという事故が発生しました。
このときも救護体制が未整備だったため、止血の知識があるスタッフがその場におらず、誰もがタオルやティッシュでなんとか対応するしかありませんでした。
出血はなかなか止まらず、本人も動揺し、周囲の人々にも不安が広がる中で、ようやく医療機関に連絡。応急処置として強く圧迫して止血すべきだったことを、後から知る形となりました。
救護体制がないことによる3つのリスク
- 【対応の遅れ】
• 急病や事故は“初動”が命取り
• 医療的知識のない人による判断では時間を失う - 【現場混乱と不安】
• 「誰が何をするか」が不明確で、参加者やスタッフ全体が動揺
• その様子がSNSで拡散 → 信用失墜へ - 【主催者責任の追及】
• 対応の遅れや不適切な処置が、大きなトラブルに
• 企業や団体としての危機管理姿勢を問われる
救護体制があればどう違ったか?
上記の2つの事例は、専門スタッフの配置と救護所の設置があれば、
• 症状から医療的に搬送の判断が早期にできた
• 出血事故でも即時に正しい止血ができ、搬送まで冷静に対応
という流れが可能だったでしょう。
また、事後対応の記録があれば、後日のトラブルにも備えられます。
まとめ|“何かあったとき”では遅い。救護体制は初期対応の要
ベントにおける「何も起きなかった」は、救護が要らなかった証拠ではなく、「備えがあったからこそ安心して進行できた」という裏返しです。
何かが起きたとき、誰がどのように対応するのか。救護体制がないと、その問いに答えることすら困難になります。
次回は、「では実際に、救護体制はどうやって作るのか?」をテーマに、計画や人員配置、必要機材などについて解説していきます。