「イベントで事故が起きる前にできること|音楽イベントの“ヒヤリハット”から考える救護体制」

2026年9月30日、消費者安全調査委員会から「音楽イベントにおける混雑に伴う事故等原因調査について(経過報告)」が公表されました。

今回の調査のきっかけとなったのは、実際に多数の負傷者が発生した事故ではありません。

屋内の音楽イベントで、入場口から座席までの通路付近が著しく混雑し、「身体を横にしても人の間から抜け出せない」「強い体圧を感じる」という状態が約30分続いたという事例です。

具体的な人的被害は確認されていませんでしたが、重大な群集事故につながる可能性があるとして調査が行われています。

約4割が「混雑・安全面で気になった経験」

調査では、最近1年間に収容規模5,000人以上の屋内型音楽イベントに参加した1,276人を対象にアンケートが行われています。

その結果、開演前や退場時などに、混雑や安全面について気になった経験がある人が少なくないことが明らかになりました。

具体的には、

  • 退場時に身動きが取れなくなった
  • 入場者とグッズ購入者・交換者が混在した
  • 階段がグッズ購入の待機列になった
  • 写真撮影のために人が立ち止まり、押し合いになった
  • 階段で人が密集し、ドミノ倒しになりそうだった

といった声が報告されています。

「けが人がいなかった=安全だった」とは限らない

イベント救護に携わっていると、救急搬送や大きな事故がなければ「無事に終了した」と考えがちです。

もちろん傷病者が発生しないことは何よりですが、今回の報告で注目したいのは、実際の事故だけでなく、その一歩手前にあるヒヤリハットに目を向けていることです。

例えば、

「救護所までの通路が一時的に人で塞がれた」

「救急車の進入経路に車両や資材が置かれていた」

「階段付近に人が集中していた」

「AEDまで迅速にアクセスできない状況だった」

こうしたことも、結果として事故にならなかっただけで、次回も同じ結果になるとは限りません。

イベントごとにリスクは違います

同じ5,000人規模のイベントでも、安全上の条件は同じではありません。

屋内か屋外か。
座席かスタンディングか。
階段や狭い通路はあるか。
一斉退場が発生するか。
物販やグッズ交換があるか。
高齢者や子どもの参加が多いか。
暑熱環境なのか。
救急車は会場まで進入できるのか。

こうした条件によって、想定される傷病者や必要となる救護体制も変わります。

今回の経過報告でも、イベントごとの特性を考慮して混雑による危険性や対策の効果を詳細に評価する方法・基準について、現状ではルール化されていないことが指摘されています。

「何人配置するか」の前に考えること

イベント救護というと、

「看護師は何人必要ですか?」

「救急救命士は1人で足りますか?」

というご相談をいただくことがあります。

しかし本来は、人数だけで救護体制を決めることはできません。

まず、

どのような事故・傷病が起こり得るのか

を考え、

どこで起こりやすいのか

を確認し、

そのうえで、

どの資格者を何人配置するのか、どこに救護所を設置するのか、どのような資機材を準備するのか、119番通報後にどのように救急隊へ引き継ぐのか

まで考える必要があります。

眞心ライドがイベント救護で大切にしていること

眞心ライドでは、看護師や救急救命士を単に配置するだけではなく、イベントの内容や規模、会場環境などを確認したうえで救護体制を検討しています。

救護所の設置、AEDをはじめとする救護資機材、傷病者発生時の対応、救急要請、搬送までを想定し、主催者や関係スタッフと連携して当日の救護所運営を行います。

また、イベント終了後の救護記録やヒヤリハットを次回の開催に生かすことも、安全なイベント運営には重要だと考えています。

事故が起きる前に考える

今回の調査はまだ「経過報告」であり、消費者安全調査委員会では今後、アンケートの分析や群集シミュレーションなどを進め、事故の発生要因や再発防止策を検討するとしています。

最終的にどのような提言が示されるのか、私たちも注視していきたいと思います。

イベント救護で重要なのは、事故が起きてから対応することだけではありません。

「何が起こり得るのか」を開催前に考え、事故や傷病者が発生したときに対応できる体制を準備しておくこと。

そして、事故には至らなかった小さなヒヤリハットを、次回の安全につなげていくこと。

これもイベント救護の重要な役割だと、眞心ライドは考えています。