人工呼吸器使用利用者の搬送時の注意点
― 民間救急・介護タクシー事業者向け実務ガイド ―
人工呼吸器を使用されている利用者の搬送は、通常の介護タクシー搬送とは異なり、事前準備と安全管理が非常に重要になります。
人工呼吸器の搬送では、
- 電源確保
- 医療機器管理
- 緊急時対応
- 転倒防止対策
など、多くの確認事項があります。
本記事では、民間救急・介護タクシー事業者向けに、人工呼吸器使用利用者の搬送時の実務上の注意点をまとめました。
実際の搬送経験をもとに整理しています。
① 移動前の注意点(出発前チェック)
人工呼吸器搬送では、出発前の準備が最も重要です。
準備不足が事故につながることもあります。
呼吸器設定の確認
搬送前には必ず以下を確認します。
- 換気モード
- 設定値
- アラーム設定
- 加湿の有無
可能であれば、
設定値を紙や写真で記録しておくと安心です。
万が一設定が変わった場合の復旧が容易になります。
バッテリー残量の確認
人工呼吸器搬送では、
バッテリー管理が最重要項目の一つです。
確認事項:
- 内蔵バッテリー残量
- 外部バッテリー残量
- 使用可能時間
目安としては、
予定搬送時間の2倍以上のバッテリー確保が理想です。
渋滞やトラブルを考慮した準備が必要です。
電源コード・コンセントの持参
必ず持参します。
- AC電源コード
- 延長コード
- 電源タップ
施設や病院到着時に必要になります。
忘れやすいポイントです。
吸引器の準備
必須機材です。
確認事項:
- バッテリー残量
- チューブ接続
- カテーテル準備
吸引が必要な方では、
搬送中の吸引を想定した準備が必要です。

BVM(バッグバルブマスク)の持参
トラブル時のバックアップとして必須です。
人工呼吸器トラブル時には、
BVMによる換気が最後の手段になります。
サイズ確認も重要です。

カフ圧計の持参
見落とされやすいですが重要です。
- カフ圧低下
- 空気漏れ
への対応が可能になります。
長距離搬送では特に必要です。
シリンジの持参
カフ調整用として必要です。
- 10mlシリンジなど
1本は必ず準備します。
モニター機器の準備
最低限必要なのは:
- SpO₂モニター
呼吸状態の把握には必須です。
できれば:
- 脈拍表示機能付き
が望ましいです。

② 移動中の注意点(車両内管理)
呼吸器の転倒防止対策
人工呼吸器は重量があり、
転倒すると重大事故につながります。
必ず:
- ベルト固定
- 台車固定
- 滑り止め使用
などの対策を行います。
特に:
- 急ブレーキ
- カーブ
で動きやすいため注意が必要です。

回路の引っ張り防止
よくあるトラブルが:
- 回路の外れ
- チューブ屈曲
です。
確認ポイント:
- 回路に余裕を持たせる
- 体位変換後の確認
- 乗降時の確認
呼吸状態の観察
搬送中は:
- 呼吸数
- SpO₂
- 表情
を定期的に確認します。
特に:
- 出発直後
- 体位変更後
は変化が出やすいため注意が必要です。
③ 搬送途上の注意点(トラブル対応)
バッテリー残量の定期確認
長距離搬送では、
途中でもバッテリー残量確認が必要です。
目安:
- 30分〜1時間ごと
車両電源からの給電は注意
重要なポイントです。
人工呼吸器メーカーの取扱説明書では、外部電源は専用ケーブルや専用自動車アダプターのみ使用するよう指定されており、指定外の電源装置の使用は不適切動作の原因となる可能性があるとされています。
使用前には:
- メーカー確認
- 取扱説明書確認
を必ず行う必要があります。
基本的には:
バッテリー運用を前提にした計画が安全です。
アラーム対応
人工呼吸器搬送では:
- 回路外れアラーム
- 低換気アラーム
- バッテリー低下アラーム
が発生することがあります。
慌てず、
- 原因確認
- 呼吸状態確認
を行うことが重要です。
④ まとめ
人工呼吸器搬送では、
事前準備が安全性を大きく左右します。
特に重要なのは:
- 呼吸器設定確認
- バッテリー確保
- 機材準備
- 転倒防止対策
- 緊急時対応準備
人工呼吸器搬送は、
「準備が8割」
と言っても過言ではありません。
安全な搬送のために、確実な準備を行うことが重要です。